成東町の古墳(作田川流域の古墳)

 作田川流域の西ノ台古墳、不動塚古墳などの大型前方後円墳と駄ノ塚古墳などの方墳が混在する板附古墳群を巡る。特に駄ノ塚は、武社の国を代表する古墳として知られている。

●コース

*いずれもバスの便が悪いので、事前の確認が必要(ちばフラワーバス成東営業所0475−82−2611)。

 作田川支流の成東川流域には、上流に山武町の武勝古墳群、中流右岸の山武町の森台古墳群、下流域には板附古墳群、和田古墳群、湯坂古墳群などが点在する。注目されるのは、大型古墳を抱える板附古墳群である。なお、全コースP. WC. はない。

駄ノ塚古墳

(板附4号墳)
 成東駅から日向経由八街行きのバス(2〜4本/1日)に乗車。板附下車。板附公民館そばの火の見櫓そばの細く緩やかな道を上ると、道が上下に分かれているので、下を行く。やや行った右手の雑木林の台地上に駄ノ塚古墳がある。県内第2位の1辺62mで、3段築成の方墳。

駄ノ塚古墳 方墳◆7世紀前半◆所在地 成東町板附◆一辺62m 高さ10m◆埋葬施設 横穴式石室(複式構造)全長7.76m 前室長 2.32m 幅1.32m 高さ1.9m 奥室長2.74m 幅1.55m 高さ2m 羨道部長1.8m 幅1.14m 高さ1.68m◆出土品 鉄地銀象嵌頭推太刀、金銅歩揺付飾金具、鉄地銀張帯先金具、金銅双脚飾鋲、ガラス小玉、勾玉、耳環、 須恵器、土師器◆備考 1985年国立歴史民俗博物館調査




駄ノ塚古墳墳丘実測図


駄ノ塚古墳

駄ノ塚西古墳

 駄ノ塚古墳から畑の中に高さ1mくらいの草むらが見える。これが駄ノ塚西古墳である。一辺30mの方墳で、墳丘はすでに削平されている。埋葬施設は軟質砂岩の切石で築成された横穴式石室。天井石などの一部は崩落している。
 本文とは別なルートもあるので上記の地図を参照されたい。

memo

 墳丘上は手入れが悪く荒れている。離れて見た方が形状が分かる。奥室西壁に仏像が線刻されているといわれる。後世のいたずらであろう。


駄ノ塚西古墳 方墳◆7世紀◆所在地 成東町板附◆一辺30m◆埋葬施設 横穴式石室◆備考 1979年調査




駄ノ塚西古墳

不動塚古墳

(板附15号墳)
 板附公民館の火の見櫓まで戻って、日向方面へさらに進むと小安いちご園の直売所がある。その後の道に回り込み、畑と二階建て民家の間の道を上り、竹の落葉を踏みながら左へ道なりに行くと不動塚古墳。全長63mの前方後円墳。周溝、周堤もよく残っている。

memo

 石室東壁面に人物、馬の線刻画が
あったそうである。現在は埋め戻されている。南側は崖で、下の水田がよく見える所に造られている。
 上り道の途中の民家付近は、12月末から1月ごろなら水仙が咲き香る。


不動塚古墳 前方後円墳◆6世紀後半◆所在地 成東町板附◆全長63m◆方位 N-80°-W◆前方部幅36m 高さ6m◆後円部径34.5m 高さ6.8m◆埋葬施設 横穴式石室 玄室長2.5m 玄室幅1.4m 玄室高さ1.7m 床面石敷き(排水溝あり) 羨道長2.3m 羨道幅1.24m◆出土品 鉄鏃、ガラス小玉◆備考 1951年日本大学調査 石室壁面に線刻画有り




不動塚古墳墳丘実測図


不動塚古墳

 

西ノ台古墳

(板附14号墳)
 不動塚そばの農道(舗装)を北に約250m行くと桑畑の反対側に杉が整然と並んでいる。中に入ってすぐ左手が前方部。前方部を西に、後円部を東に向けて構築された全長90mの古墳。後円部は、山砂採取のために半分が崩落。二重周溝を持ち、内側の周溝と周堤はよく残っている。家型、人物などの形象埴輪が墳丘北側の後円部から発見され、中堤部には円筒埴輪が並べられていた。なお、前方部の北側にある小古墳は前期の方墳であろうか。西の台古墳の周溝がそれを避けて狭く掘られている。
 帰りは、台地を下りて0.5km、湯坂入口バス停から成東駅へ。


県道から西ノ台古墳を見る


西ノ台古墳墳丘実測図

 

西ノ台古墳 前方後円墳◆6世紀後半◆所在地 成東町板附字西ノ台◆全長90m◆方位 N-87°-W◆前方部幅36m 高さ5.7m◆後円部径50m 高さ6.7m◆出土品 埴輪(円筒、人物、家、馬)、土師器◆備考 1954年日本大学調査 1989・90年国立歴史民俗博物館調査

 

memo

 不動塚古墳に比べて草もあまりなく、なんなく墳丘に登れる。ただし、後円部は足元に注意。篠竹の間から歩いて来た道やいちご園が見下ろせる。板附古墳群の最大規模の前方後円墳だということが実感できる。


見どころ

●成東町歴史民俗資料館 歌人伊藤左千夫の生家及び遺品、遺墨も展示。西の台古墳、不動塚古墳の埴輪が見られる。0475−82−2842、月曜休館、130円。


成東町歴史民俗資料館

●食虫植物群落地 4月〜10月末ころまで、食虫植物だけでなく湿原のかれんな花がその季節ごとに楽しめる。9月末までは解説ボランティアもいる。国天然記念物に指定されている。


食虫植物群落地

 


おみやげ

●伊藤左千夫の小説「春の潮」にちなんだ潮サブレーの安井堂(0475−82−2721、木曜休)、左千夫最中の橋本(0475−82−2038、木曜休)などが有名。


古墳豆知識

◇埴輪の意味と種類◇
 埴輪は、古墳の上や中段、まわりにたて並べられ、古墳を飾った。丸い竹筒のような円筒埴輪、人物をかたどった人物埴輪、動物をかたどった動物埴輪、道具や家をかたどった器財埴輪、家形埴輪などさまざまな種類の埴輪がある。
 埴輪は、埴土(材料の粘土)で作った輪であり、ほかに木や石の埴輪もあり、死者をまつる儀式に使われたと考えられる。
 文字資料のほとんどない古墳時代の風俗や習慣など、当時の人々の生活を具体的に知ることのできる数少ない手がかりとなる。
 埴輪の起源は、岡山県を中心とした弥生時代からつづく壷とそれをのせる台(特殊器台)の組合せによる円筒状のものが、円筒埴輪に変化したと考えられる。
 殉死する者を生き埋めにするかわりに埴輪を古墳のまわり埋葬したという垂仁天皇32年の記述は、葬祭を司る野見宿弥を祖とする土師氏の功績をたたえる後世の説話と見るべきである。

殿部田1号墳

殿部田1号墳

東京堂出版『古墳辞典』より引用

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