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かんぽう武射 No.7 ◎平成5年11月12日発行

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芝山町の繩文時代早・前期

埴輪からかいま見た古代 ―馬 その2―

■芝山町の繩文時代早・前期
(財)東総文化財センター 調査課長 宮 重行

 氷河期が終わり旧石器時代に続いて、今から約1万2千年前に繩文時代が始まり、弥生時代の開始まで約1万年間続きます。繩文時代は草創・早・前・中・後・晩期の6時期に分けられます。
 この時代には暖かい気候になって氷河が融け出し、海面が上昇しました。これを「繩文海進」といい、前期の時代が最大で現在よりも10m近くも海面が高くなっていました。栗山川沿いは入り江になっており、貝や魚も豊富で繩文人には絶好の生活環境だったものと思われます。
 芝山町で遺跡がみつかるのは早期からで、空港No.7遺跡を始め43個所もの多数にのぼり、繩文早期遺跡の宝庫といえます。前期の遺跡は25遺跡あり、遠野台・長津遺跡で竪穴住居跡、大台遺跡でも墓とされている土坑がみつかっています。

◇繩文時代の生活◇
 繩文時代を特徴づけるものとして、繩文海進、土器の使用、竪穴住居の出現、貝塚の形成、磨製石器の定着、弓矢の採用など数多くあげられますが、最も大きなものは一つのところに長く住むようになり、定住的な生活をしていたことではないでしょうか。
 繩文時代も前時代と同様、狩猟・漁労・採集の生活を続けていましたが、旧石器時代にいたゾウなどの大型の獣は絶滅してしまい、かわってシカ・イノシシなどの中型以下の獣が狩猟の比重が移ります。大型の動物を追い移動していた生活から、動物の小型化に対応して、一定の場所で生活しながら、弓矢を使用したり陥し穴を利用したり、工夫して獲物を安定的に確保していたものとみられます。
 定住化には土器の使用も一役かっています。土器を使い始めたことで、容易に食物を煮て食べることができるようになります。これはひとつの革命的な出来事です。それまで食べられなかったもの(木ノ実など、でんぷん質の中には加熱しないと消化できないものがある)が、煮ることで食べられるようになり食料の幅が広がりました。また貝は加熱すると自然に口が開き処理しやすくなります。貝塚のできた訳に、貝を土器で煮て大量処理して、保存食の干貝にし、その殻を捨てていたからという考えもあります。このように土器の使用により、多くの人々を養うことができるようになった訳です。
 定住化に伴い、住まいは旧石器時代のテント式住居から、繩文時代早期には地面を円形や方形に掘り込んで上に屋根をかけた竪穴住居が作られるようになります。数本の柱を持ち屋根を萱などでふいた簡単な家で、初めは炉は屋内でなく、屋外に掘り込んだ炉穴や焼け石を使用していましたが、前期以降は家の中に調理用の炉が設けられました。このような家が集まりムラが作られていたと思われます。

◇繩文土器◇
 繩文土器は繩目などの文様を持つ土器で、各時期で異なった特徴をもっています。土器をよくみれば時期がわかり、いわば時代を決める物差しになっています。
 繩文早期では、尖り底の土器が使われています。不安定な形でどうやって使ったのだろうか疑問がわきます。どうも炉穴の壁に土器を立てかけて煮炊きに使用していたようです。それ以降の土器は置きやすい平底のものになります。また、大型の土器を作りやすくするためか、植物などの繊維を多量に混ぜた土が使われているものも多くみられます。浅鉢形の土器もあり、さまざまな器形の土器が生まれ始めています。

■埴輪からかいま見た古代

―馬 その2―

 飾り馬を表現した馬形埴輪は、たてがみを切りそろえ、きらびやかな飾り金具をつけ、晴れがましい姿をしている。
 馬具には馬を制御する轡(くつわ)や手綱と乗馬用の為の鞍と鐙(あぶみ)および儀式用の馬を飾りたてる飾り金具の3種類に大別する事が出来るが、馬具の大部分である鞍や皮帯などは、有機質であるが故、腐食して朽ち果て、古墳時代の実物を見ることは希である。
 したがって、当時の馬具の形状や装着状況を知ることは、簡略化され、象徴化されたとはいえ、馬形埴輪をおいて他に知るすべがないわけである。
 皮帯の交差部を固定する雲珠(うず)や辻金具、垂れ飾りである杏葉(ぎょうよう)、馬鐸、馬鈴などの多くは金メッキされ、ひかり輝いていた。
 古墳埋葬にともなった政権交代式などの古墳祭祀では、塗金された馬具で飾り付けられた馬は、きらびやかで極めて目立った生きた飾りものであった事であろう。また、古墳の墳丘上やまわりに巡らされた馬形埴輪を含む埴輪群(列)は、先代の首長の業績を讃え、一族の新たな首長が権威を継承し、誇示するにふさわしい宣伝広告塔になった事と思われる。
 よく、馬は利口で乗る人を見る。と言われるように、この動物は、意志をもった益畜として、特に乗馬の風習が入ってくると人々に急速に親しみをもって大事にされたものと思われる。

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